Procreate への愛と情熱の 10 年

イベント 2021年3月11日

オーストラリア、タスマニア島ホバートの郊外にある住宅の空き部屋で Procreate が初めて考案された当時、その夢は初代 iPad 向けに最高の描画アプリを開発することでした。

「Steve Job が行った iPad の最初のプレゼンを目にした瞬間、全員が感動していました。誰もが可能性を感じ、iPad で描画できればどれほど素晴らしいかと考えたのです。そこからは、iPad で最高の描画体験を実現するアプリの開発に向けた論理的な進行でした」と、プロダクトデザイナとクリエイティブディレクタを兼任する CEO、James Cuda は述べています。

10 年経った今もその目標は同じであるとはいえ、大きな変化を遂げました。現在、Procreate 5X には大幅に改良されたエンジンが搭載され、最高の描画体験がより一層向上したほか、ブラシは他の追随を許さず、何百も独自機能が取り入れられています。“ColorDrop”、“QuickShape”、“タイムラプス”、“ストリームライン”、“2 本指の取り消し”、“ペイントフィルタ” など、多くの独自機能によって、アーティストの活動に変化をもたらし、クリエイター業界の向上に貢献してきました。今や有料アプリランキングでトップの常連となっている Procreate は、何千人ものプロのクリエイターから成る情熱的なグローバルコミュニティを抱え、iPad と iPhone におけるデジタルアートの業界標準として広く認められています。

Procreate は、絶えずアーティストにさまざまな創造の可能性を提供してきました。Kyle Lambert 氏は、まさにそれを認識し活用した最初のアーティストの 1 人です。自分の指と Procreate だけを使ったその写真のようにリアルな Morgan Freeman のペイントは、これまでに生み出されたデジタルアートの中で最も有名かつ悪評を得た作品の 1 つです。同氏曰く、「この作品が私にとって大きな意味を持つようになったのは、制作中の (タイムラプス) ビデオがインターネット上で受けたばかげた反応のせいでもありますが、このアプリが私にとって今後どれだけ強力な存在になるかを証明したからでもあります。」

作品: Kyle Lambert、写真: Scott Gries

次に同氏は、Procreate を使って自身初の大規模商業プロジェクトである『Stranger Things』向けアートワークの制作に取り掛かりました。「このアプリに搭載されていたツールのおかげで、イラストレーション寄りの新たなスタイルを見つけることができました。そのスタイルは現在も続けています。初代 iPad で指を使ったペイントとして始めたものが、今やハリウッドの大通りに並ぶ巨大看板となったことを思えば信じがたい気分ですが、Procreate はこのような激動の道のりにもずっとつきあってくれました。」

Procreate の中心には、常にシンプルさとパフォーマンスが据えられています。当初から Procreate に携わってきた CTO の Lloyd Bottomley はこの点について、「体験と使いやすさに関して (おそらくシンプルさはなおさら)、自分自身のワークフローに求めるすべてのことを、Procreate での開発で我々が取ったアプローチが表している」と考えています。このようなシンプルさが独自の強力なツールに取り入れられたことで、世界中のデジタルアーティストの心に強く響いたといえるでしょう。

もう 1 人のアーリーアダプターであり、Procreate のアーティストである Asuka111 氏は、これを次のように要約します。「あらゆるアプリの中で最高のペイント体験を提供してくれます。私が一番気に入っている機能は、ジェスチャショートカットです。紙の上でも取り消し操作を行おうとして “ダブルタップ” してしまうほど、とても直感的だと感じています。」しかし、Procreate に注目したのはデジタルアーティストだけではありません。2013 年には、その卓越したデザインと業界をリードするイノベーションが Apple Design Award で認められました。

Asuka111 氏によるアートワーク

この受賞歴のある方程式を iPhone に取り入れたことで、2014 年 12 月には Procreate Pocket が登場します。課題は多かったものの、最終的には Procreate のポータブル性がさらに高まりました。「Procreate Pocket を使用したことは驚くほどあります。アートカンファレンスで使ったり、ポートフォリオレビューで簡単なペイントのデモを行うために使ったり、タクシーで移動しながらギリギリでマーケティング資料を仕上げたことも多々あります」と、ビジュアルデベロップメントアーティストであり 3D アニメーターでもある Goro Fujita 氏はコメントしています。「常にクリエイティブなスイスアーミーナイフがポケットに入っていることがわかっていると安心できます。」

Goro 氏によるアートワーク

2015 年 11 月、Apple は初代 iPad Pro を Apple Pencil と同時にリリースし、初代 iPad のリリース時と同じようにすべてを一変させました。筆圧の細かいコントロールや、傾きによるニュアンスの追加、本物の鉛筆に近い感覚が実現されたことで、Procreate は、それまでのデジタルアートの中で最もアナログに近い体験を再現することに成功し、今もそれは変わりません。

Claudine O’Sullivan 氏は、Procreate を使って Apple Pencil の発売キャンペーン用に制作したイラストレーションに対し、2017 年 Association of Illustrators World Illustration Professional Advertising Award を受賞しました。それは自身にとってデジタル技術を使って描いた初めての体験でした。「自分でも驚いたのは、それが大失敗に終わったり、一度切りの実験に終わったりしなかったことです」と、同氏は明かします。「私が使っている色鉛筆を再現するために、Pencil の設定をいくつか微調整しました。結果はご存じのとおりです。それから現在に至るまで、紙に描くのとまったく同じやり方で iPad Pro でも創作活動を続けています」。習得に時間がかからなくなったことで、従来型のアーティストがデジタル技術を使って気軽に創作を始められるようになりました。Procreate と Apple Pencil によってその移行が自然で容易に感じられるようになったためです。

作品:Claudine O'Sullivan 、プロパティ:Apple Inc.

それ以降、Procreate はますます進化します。Metal ネイティブの Valkyrie エンジンでゼロから再構築し、描画とブラシ作成の操作性をさらに向上させました。それと同時に、プロ仕様の一連の仕上げ効果はもちろん、アニメーションの導入まで、何百もの新機能を取り入れました。「Procreate でアニメーションを得たことが、私の最大のハイライトだったと言うべきでしょう」と、有名なデジタルアーティストであり、Procreate のアーリーアダプターでもある Nikolai ‘Nikko’ Lockertsen 氏は説明します。「ペイントに命を吹き込むことができるようになったり、いきなりギャグを入れたり映画を制作したりできるようになった (ことは素晴らしい)。そしてもちろん、Procreate チームに出会えたことも。」

作品:Nikko

まさに Nikko 氏が指摘したとおり、Procreate の過去 10 年間の成功の秘訣は、自分たちのアプリを使って Procreate のコミュニティが生み出すものを飽きることなく見守り続けてきた、有能かつ献身的なアートを愛するスタッフが作るチームです。Procreate チームは、過去 10 年間で 4 人から 40 人を優に超すまでに成長しましたが、アーティストに最高のデジタル描画体験を提供することを目指す愛と情熱の強さはまったく変わっていません。

10 年経った今でも、James Cuda は Procreate の未来に情熱を傾けています。「最高の描画アプリケーションの開発に向けた探求の中で、試行錯誤の繰り返しと発明に明け暮れた 10 年でした。我々の目標には届いていませんが、まだまだこれからです。この 10 年間は、多くの面でもっと大きなことを成し遂げるための基盤をひらすら築いてきたと言えるでしょう。」

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